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□不器用ディスタンス
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三番隊を去った恋次は六番隊舎へ帰る道を走っていた。
距離はあるが、丁度いい鍛錬代わりだ。
まだ朝早い瀞霊廷に人は少ない。
しかし周りを見れば自分と同じように走っている者も公園で竹刀を振るう者もいる。
中には真っ白い胴衣の霊術院生も混じっていた。
自分もかつてその様に鍛錬に励んだ事を思い出し、どこか和んだ気持ちになる。
初々しい姿にかつての自分たちを重ね合わせて胸中で声援を送った。


そうして六番隊へ戻ってから一汗流し、鍛錬着から死覇装に袖を通す。
不意に先ほどの見かけた霊術院の制服姿から、今朝訪れた友人のことを思い出した。
吉良――昔からアイツは変に不器用で意固地なところがある。
しかも生来の生真面目さゆえなのか、はたまた学生の頃からの崇拝の気持ちが強い所為なのか、上司である市丸にやたらと気を使い過ぎる。
無茶をするなと言っても、逆効果なのだ。
倒れるまで誰にも何も言わずに無理を通そうとする性格だと知っているので、何かと気にかかってしまう。
思えばその辺り、学生から成長してないのではないか。
そう言ってしまうと自分も怪しいが、少なくとも多少は成長していると思う。
「…っし。ま、今日も頑張っか」
気合を入れて髪を結い上げれば戦闘態勢は万全。
蛇尾丸を一振りしてから腰に佩いて、意気揚々と部屋を出た。


「…つって、毎日、報告書作成とかやるんだけどよ…」
「どうした、手が動いていない」
「わかってますって!」
そう。
どうしても地位ある者は書類仕事との戦いになる。
仰裁される書類がとにかく多いのである。
その為、毎日と言っていいが机上で書類と格闘するのが務めでもあった。
戦闘訓練の結果、六番隊の会議の報告、他隊との連携案などそれは多岐に渡る。
全く好ましい仕事ではないのだがそれらの内容を知っておくのと知らないのでは戦闘に於いて歴然の差を産むのだ。
だから内容が理解できなくても、とりあえず目は通す。
それだけでもどこかで思い出すこともあるから、と――イヅルにアドバイスされて、確かにその通りだった。
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