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□アイしてなヰ
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「…あんたんはんこそ何考えてはるの?」
背中越しに問いかけると、書をしたためている藍染が吐息で笑う。
様子を覗くと何やら書き物をしていた。
墨を吸った筆が流暢な文字を和紙に踊らせている。
それが持つ意味を知ろうとも思わない。
ただその内容が穏やかではないことだけは確かなことだ。
彼がこうして上機嫌な時というのは往々にして良いことを考えている時では無いことを長い付き合いの自分は知っている。
クスクスと笑う振動が身体を揺らす。
「君のことだ、と言ったら?」
「ややわぁ、てんご言いはって」
「僕は本気なんだけれどね」
「ほんにいけずやわ。どうせこれからの悪巧みにボクをどう使おうか考えてはるんですやろ」
「その通り」
低い声が、眠気に支配された耳に心地よく溶けていった。
例えこの言葉が嘘だとしても構わない。
こんな風に互いの腹の内を探る言葉遊びは暇を潰す絶好の遊び。
飽きない言の葉の遊戯だ。
こちらのことなど構いもせずに、藍染は黙々と筆を滑らせている。
しばらく見事な筆跡を眺めていたが、それも飽きた。
することも無くてギンは再び夢の淵に気だるくまどろむ。
布越しに伝わる心音と温もりが心地いい。
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