三番隊/弐

残夢
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空を見上げていたら欠伸が出た。
冬とは言え屋内は日差しがあれば暖かい。
使われていない部屋で羽織を布団代わりに引っ掛けて横になる。
鬼道で入り口を隠してしまったから誰も入って来ることはないだろう。
安心して眠る事が出来る。
昨夜は夜遅くまで遊んでいたから、眠い。
微睡に落ちていく中で、ボクを呼ぶ声が聞こえる。
何人もいるのか、こだまが掛かって子守唄のようにも響いてくる。
イヅルには所在を伝えていないから、人を使って探し回っているのだろう。
いつものことだ。
仕事は申し訳ないが有能な彼に押し付けてしまうことにする。
そう思って深い眠りに身を任せた。
罪悪感と安堵感のその中で、イヅルの顔が浮かんでは消える。
朝もあの子は仕事をして下さい、と眉間に皺を寄せて怒っていたっけ。
…まあ、これもいつものことだ。
笑った方が可愛いのに、と思う。
けれど怒らせているボクが望むことじゃない。
本当は、ずっとずっと笑っていて欲しいのだけれど。
どうしたら願いは叶えられるのだろう。
きっと真面目に仕事をしただけでイヅルが笑顔で居てくれるとは思えないし。
あの子があんな風だから、ボクが遊んでしまう悪循環なのかもしれない。
そんな無責任な事で自分の疑問に終止符。
欠伸を一つして、寝返りを打つ。
枕の代わりに畳んだ座布団の位置を直す。
夢現の心地でイヅルのお小言を思い返しながら、畳に吸い込まれる感覚に任せて眠りに落ちていった。
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