三番隊/弐

影二重
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「君 もう無理やで」


抉る言葉を受け取った瞳が、逸れる
太陽と同じ色をした髪の少年に
あの子の面影を、見た

警告の言葉を発して、甚振る
それはかつて、あの子にも使った手管
心を折るのは容易いことだ
柔らかな言葉で呑んで終えば良い


ほら、絶望に満ちた顔が――首を垂れる


死を恐れる心は必要だ
死に怯える心も必要だ


死を厭わないボクには彼らが愛おしい
そう、命なんて要らない
そんなものは、疾うに棄てている
あの子が幸せで在るのなら
ボクの命なんか要らない


「死ぬん、厭やろ」


ああ、いつだったか
同じ言葉をあの子にも投げた
眼前の少年の瞳が揺らぐ
あの子と同じに、戸惑いの漣が押し寄せる


そう――それで、良い


言葉で追い詰める快感
警告を刃として発する
心の裏側で舌舐めずり


この身は、蛇


ボクの心なんて、知らなくて良い
この後、散っていくこの身なんて
お涙頂戴の別れなんて似合わない

さよならは告げた
怖いものなどない
恐れるものもない
未練は、少し在る


それは、愛おしい子のぬくもり


胸を締め付ける想いは
今でも鮮やかにボクを惑わせる
遠くに感じる、弱った霊圧を偲んで
そっと眉根を寄せた

傍に居たかった
でもそんな術を知らなかった
ボクが選んだ、選べた世界は醜悪
此処にはあの子は似合わない
陽の光の指す場所で笑っていて欲しい

それは、きっと
目の前の少年が
どこかあの子に似たこの子が
それを叶えてくれるだろう


ボクは笑う
少年が焦る


その姿に――矢張り、あの子が重なる


後悔に似た苛立ちがボクに刃を取らせる
この瀬戸際であの子を想い出したくない
未練が断ち切れない己を呪うように笑う


けれど、振り上げた刃は血を吸わない
あの人が、蛹籃を終えて目覚める
咎めるような視線にはいつもの微苦笑


時間切れ――だ
胸に残る感傷を振り払う
白い背に従う頃、蛇の顎を開いて


いざや、神殺しの舞台の扉を潜ろう――


【…to be DISIDE theatre!】
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