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□アイしてなヰ
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「何を考えているんだい?」
「…別に、なぁんも」


夢現のまま藍染の背中に凭れつつ、ギンは欠伸交じりに答えた。
外は雨。
時刻は夜。
此処は藍染の私室。
五番隊宿舎の最奥にある此処は至極簡素なものだった。
文机と書棚、そして布団しか無い殺風景な部屋はなんとなく寂しいが、嫌な感じはしない。
必要最低限な物しか無い姿が好ましい。
それは自分の部屋と大して代わり映えがしないからだろうか――と思った。
違う個所は、庭に咲く花だろうか。
開け放たれた障子の先に色とりどりの紫陽花が群れていた。
赤く青く、根を張る土壌に左右されて色彩を変える花。
美しいのにどこか掴みどころのない花。
濡れた様が似合う花だ。
雨に打たれるそれをぼんやり眺めていて、ふと思い出した。
あの花はまるでどこかの誰かのようと彼がそれを見て去年笑っていたこと。
生憎と花に詳しくない。
何のことか解らず終いで誰のことを差しているのか、真相は闇の中だ。
とはいえ、今更そんな古い話を尋ねるのもどうだろうと思って、ギンはゆるりと問い返した。
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