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□はるのうた
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桜の蕾も開き出す、暖かい陽射しが燦燦と降る午後のこと。
今年は暖かい所為か桜が咲くのも早いようで気の早いものはもう満開だった。
そんな中、三番隊の会議室では二人の副隊長がその春の日差しを浴びて何やら相談をしているところだった。
「そういえば吉良くん、今月の挿絵どうしよっか」
「もう4月だよね…花の絵をお願いしても構わないかな」
「じゃあ何の花にする? 4月って言ったら桜が普通だよね」
雛森がうーん、と眉根を寄せて思案する。それを見てイヅルが穏やかに微笑んだ。 
机には桜を模した季節の菓子と茶が並んでいて、まったりとした空気が流れていた。
が、実を言うと職務中だ。
なぜこんなことになったかというと、藍染とギンの二人が急に話し合いを始めてしまったのである。
初めてのことだったので二人はただただ驚くばかり。
それでも下がれといわれた以上、それに従うしかなく、雛森は藍染を待つためこうして時間を潰しているのだった。
部屋を離れて、もうかれこれ小一時間は過ぎだろうか。
二人も始めは談笑もせずに静かにしていたのだが、そこはお互い気心の知れた間柄。
なんだかんだで雑談を始めてしまい、いつの間にか休憩時間になっていた。
「んー、じゃあ、明日には届けられると思うから待っててね」
「いつもありがとう、雛森くん」
結局、二転三転しながらも来月の挿絵はやはり桜と言うことで話が纏まったようだ。
彼女の手元には下描きなのだろう、いくつか桜の花が描かれていた。
一息ついたところで、イヅルは空になった茶を淹れる為に席を立つと雛森が慌ててそれ制す。
「あ、お構いなく、吉良くん!」
イヅルは盆を手にして苦笑する。
「いいや、構うよ。隊長たちも、まだ時間がかかりそうだから…ついでにお茶を出してくるよ」
「あ…そうだね。それじゃあ、お願いしてもいい?」
「何か要望はあるかい?」
「じゃあね、何か甘いのがいいな」
「うん。了解」
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