その他

□混沌を
1ページ/1ページ

静かな静かな夜

無音と言っても過言ではない。
服部半蔵は、静かに月を眺めていた。

「!」
半蔵は人の気配を感じ、武器を手に取った。
「月…か」
「……」
後ろにいるのは風魔小太郎。考え事をしていたせいで、反応が遅れた。いつも遭うたび戦い、決着がつかず睨み合う仲だ。
以前家臣の命令で半蔵は風魔の犬となった事もあったが、純粋に戦いを望むとは違う、どす黒い感情で包まれた風魔をずっと敵対視していた。

「クク…そう怒るな‥我は半蔵を殺しに来た訳ではない‥」
後ろから抱きつくようにして耳元で囁く。
半蔵はすぐさま武器を首に突き付けた。

「我は今宵、うぬを夜這いしようと…」
刃が首に食い込んできた。
風魔はやれやれといった様子で半蔵に話す。
「半蔵、夜這いの意味がわかるのか…」
「何しをにきた」
「半蔵と性交‥」

武器はどんどん首筋に押し込まれていく。

クククと笑い、からかうように話す。

背後を捕られるなど半蔵にとっては耐え難い事だった。風魔の首筋から血がつたう。
「流血がお好みか…?」

顔を覆い隠している布を口で剥がし、抱きしめていた片方の手を顎にあて、くいっと持ち上げた。
「っ!?」

いつもは武器を付けているので、風魔の手を見たのは初めてだった。
「恐
怖の顔をしているぞ‥クク」
「…貴様」

おちょくられて半蔵は怒りを露わにした。
首筋に食い込む刃はより深くなり、風魔は少しの痛みを感じる

「闇は永遠…我の闇も、影も‥。クク…乱世のは終わらぬ。安心しろ、家康は飽きた。」
風魔はスルリと離れ、半蔵の正面に回り込んだ。
「‥何を考えている」

半蔵は構えて睨みつけていた。それを見た風魔はニヤリと笑い、
「自分で考えろ‥…クク‥手掛かりをやろう」

半蔵の首を掴み、噛みつくようなキスをした。
「んっ!?」

息をする暇も無いくらい深く、そして風魔なりの愛情表現は嵐のように激しく、どこか淋しく、何よりも甘かった。

「‥!?」
「これで解らなかったら屑(クズ)だな」

息を切らして驚いている半蔵を余所に風魔は歩き出してしまった。
「っ…!!」
呼び止めようとしたが、やめた。

「我は風魔…闇に生きる影‥光、滅するまで」

そして風魔は闇に溶けていった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ