長編
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本は俺に、いろいろな事を教えてくれる。いろいろな所へ連れて行ってくれる。
だからいつも、俺は本を読んでいた。
俺の家から徒歩3分。
結構大きな図書館がある。
俺はそこの常連と化していた。
コツコツと靴を鳴らしながら、静まり返った図書館に入る。
独特の匂い、静かな雰囲気、きれいな造り
全てが好きだった。
俺の読む本は特に決まってる訳ではなく、ファンタジーも絵本も、とにかくなんでもいける。
最近ハマったのは、歴史の資料とか、戦国時代の物語とか。図書館の奥の奥の方に、分厚い貸し出し禁止の本と並んで置いてある。
他の奴らは面白くもなんともないとか言うんだろうけど、俺は面白いと思った。
なんだか引き込まれた。
「…あれ…」
シリーズ化されたその本は、一巻に一人の戦国武将のことについて詳しく書いてある。
この前俺は‥たしか上杉謙信を読んだ‥はず。
次は片倉小十郎だった
しかし、片倉小十郎より後ろの巻がスッポリなくなっていた。
誰かが借りたのか?
いや、それはないだろう。こんなつまんなそうな本。
「失礼致します。」
ぼへっと立ち尽くす俺の横に、きれいな水色の髪の女の子が立っていた。
大量の本を持って。
「あ、すみません。お嬢さん」
お嬢さんは図書館の人だったらしく、にこりと微笑んだ。
ふと、お嬢さんの抱えている本を見ると、俺が読みたかったシリーズのものだった。
「あ…その本…」
「あっ、お探しのものでしたか?」
「はい…それ全部。」
「え‥あ、かしこまりましたっ」
お嬢さんは一瞬驚いてから嬉しそうに会計の方へ向う。
水色のポニーテールが揺れていた。
「あ、あのっ。今ってこの本、若い男性の間で流行っているんですか?」
「え?」
お嬢さんは、はにかみながら俺を見て、
「さっきこの本を借りた方も若い男性だったので…」
と、言った。
こんな難しくて、つまんなくて、専門用語ばっかでてくる本なんて。若い男性で読めるのか?
「流行ってはいませんよ。ただ、俺は本が好きなだけで‥」
「そうなんですか。最近は、本を読む方が少なくて…だから嬉しいです。」
ネームプレートをみると、ビビと書いてあった。