おはなし

□翼ある者たち
1ページ/2ページ


ボールの弾む音に喚声が入り混じり、だんだん大きくなっていく。
「5…4…3…2…1――」
試合終了のカウントダウン、その時ボールを支配していたのは――。


ビーー、という音で彼は目を覚ました。
慌てて枕元の目覚まし時計をキャッチするが、セットすらされていない。
彼は軽く頭を振って苦笑した。
休日でよかった。
こんな夢を見てしまったら、どうせ今日は使い物にならないだろうから。


彼がバスケットに一番熱中したのは、高校生の頃だった。 誰よりも練習してスタメンを勝ち取ったのが2年の始めで、その年の夏には副キャプテンを拝命した。
――彼は努力の人だ。
周りのチームメイトが彼を評するときは、必ずこんな言葉だった。
彼自身も自分の実力を正確に把握していた。
しかし、努力の人と言われる度に。
彼の胸はチクチクと痛んだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ