おはなし
□グローインアップ
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目の前の越野が、 いつも見てきた越野と違って見えて、 仙道は教室を飛び出していた。
外に出ると、 心地よい初夏の風が出迎える。
緑の芝生は綺麗に整えられていて、 今日のような陽気では昼寝にもってこいの環境だ。
しかし仙道は横にならずに、 芝生の上に腰を落ち着けた。
飛び出してしまったのは。
越野の肩幅が、 広くなっていたから。
学ランを脱いで、 ワイシャツ一枚の越野が大人になっていた。
今日に限っては、 余裕ぶった顔を作れそうになかった。
仙道の複雑な心を笑うように、 のんびりと澄んでいる午後だ。