おはなし
□恋心
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どうしたらよかったのか。
臆病者が選んだ道。
たとえそれが間違っているのだとしても――。
「だから! 俺みたいなのをからかって面白いのかよ?」
「からかってねぇよ。 いつも言ってるだろ」
その一瞬に見せた越野の
くすぐったそうにはにかんだ顔。
その表情の意味を知るのは、俺だけでいい。
「好きだよ、越野」
気付かせてはいけないことがある。
それは、お前の俺への恋心。
気付かせてしまったら、きっと自分達はこのままではいられない。
だから俺は、 何度も囁くのだ。
長い夜――苦しまないように、悲しまないように。
お前の心を、俺の愛でいっぱいにしてしまおう。
そして、 満たされたままおやすみよ。
俺を愛さなくてすむように――。
END