081211*それを好きと呼ぶのですよ
にこりと笑って立ち去るのはなんて簡単なんだろう。相手も手を振って見送ってくれる。
その場しのぎの関係。
何人とそんな関係を築いてきたかなんてもう覚えてない。とりあえず何かで埋めたくて、とりあえず手をのばしてみたら、意外にもあっさりと何もかも手に入ってしまった。不自由なんてしてない。むしろ自分の賢さを少し誉めてやりたいとも思う。
その場しのぎの関係。
あいつにだってそのつもりで手をのばしたのに、何故か全く届かなかった。つかんでいるのに、肝心なところは届いていない。
少し不愉快だけどおもしろい。
俺に夢中になって。
その場しのぎだなんて言わないで。
どんなに好きでも譲れないことがある。プライドだってある。本当は全部欲しい。余すとこなく全部欲しい。だけど欲張りなのはダメだから、一つだけでいいよ。ただしとっておきのスペシャルな一つ。
誰にも与えられなかったお前の愛。
それだけあれば、生きていける。
罠にはまったのは、俺だ。
その場しのぎだなんて、嘘だった。
夢中になるとかありえない。
本当に、俺はどうしてしまったんだろう。
「その場しのぎ?」
「…」
「それとも、愛?」
ああ、もうダメだ。
「夢中になんて、ならん」
「ブン太以外には」
〇何でもできちゃう仁王もブン太にはかなわないという妄想。