参(文:創作)
□第一章君と目が合う―
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ガタンッパタタ…アハハ…
「川崎ー……前より点上がったな」
「佐藤ー……お前今度もギリギリじゃないか!」
「佐々木ー」
カタン…
「今回も学年二位だ!おめでとう」
「はいっ」
元気良く返事をし、テストを取りに行った少年佐々木陽太は、ここ名門小学校の六年生
ここは進学校なため、テストの点数は公表され、学年で順位が毎回発表されるなか、陽太はいつも学年二位をキープしている優等生だった
「…はい!じゃあ今日はここまで。数字Bのテキスト、英語の直ししっかりやってくるんだぞ!」
「さよーならー」
陽太は帰りの支度を始めた
陽太のうしろの席には、色素の薄い猫っ毛の少年がその様子を静かに見つめている
「陽太今日暇!?サッカーしようぜ」
「うん!」
陽太はパタパタと教室を出ていった。その後ろ姿を最後まで見送った猫っ毛の少年も帰りの支度を始める
準備が終わるとポケットから自分で作ったであろう歪な笛を吹いた
音はならない
どうやら音波のようだ
もうほとんどの生徒は教室から出ていて、数人がサワサワと話している声がしているだけ
そんな中猫っ毛の少年は、コソコソとロッカーから大きな改造されたペットボトルの機械を出して、教室を後にした
あははは…キャハハ…うおー…ダッセー!…
名門進学校でも生徒は小学生
元気に校庭でサッカーをやってる子供達の様子は普通の学校と変わらない
そんな微笑ましい校庭の隅の草原で、猫っ毛の少年はさっきロッカーから出した機械の設置、調整をしている
隣では子猫が一匹、ナーナー鳴きながら良い子にしていた
あの笛の音波が呼び声らしい
「なぁなぁ、あいついっつも一人で何やってんのかな」
「知らねー!この前先生に聞いたら世紀の大発明邪魔すんなって言われたぜ」
「あぁ私失敗してるとこ見たよ。何か飛ばす機械みたいね」
「はは!変なのー!でもでもあいついつも学年トップなんだぜ!こえー!」
「えぇ!?じゃああいつが万年一位の麻木嶺!?」
校庭はサッカーの足が一時とまり、麻木嶺の話しになってしまった
陽太はあまり他人の噂話が好きではないので、皆の話が盛り上がっているのを横目に、ボールを持て余して遊んでいた
ポンッ!!!!!
「何か打ち上げたぞあいつ!!」
「?」
陽太が音の鳴った方に顔を向けると視界のすぐ真上にフワリと何かが落ちてきた
「!」
それは綺麗なスカイブルーをした、ハンカチとはちょっと言えない、布切れのようなものだった
陽太はそれをキャッチすると、嶺の方に顔をあげた
初めて目が合う―
嶺はクリクリの目を更に見開き陽太を見た
拾ったのが陽太だと、気づいていなかったのだ
「あの…これ」
陽太は布切れを嶺の方へ差し出す
「…っ」
嶺は複雑な顔をし、一度下を向くと、そのまま布を受けとることなく、猫と校庭を走り去ってしまった
「えー!?何なのあれー!?」
「陽太が触ったもんは汚いみたいなねー!?」
「あいつ陽太が頭良いから僻んでんじゃねーの!?」
陽太も唖然としてしまったが、その後周りの皆が好き勝手言うので驚いてしまった
「そ、それはないよ!だって学年トップだよ?僕だって全然勝てない点数だし、」
「だからよ!陽太君に一位の座を奪われるのが怖いのよ!」
「そーだそーだ!」
「…そうかなぁ」
なんだか陽太はおかしな気分だった。
何なのだろうこの気持ちは…何だか胸の中がもやもやする…
そんなに話したこと無い子に、自分が拒絶されたからだろうか…
陽太はスカイブルーの布切れをゆっくりズボンのポケットにしまい込み家路についた