WONDERFUL NOVEL
□- その電話は、恋の始まり -
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『もしもし?こんな時間に電話してくるなんて珍しいね。』
その声は俺の携帯電話から入ってくるが、目の前を歩く高校生が話しているとしか思えなかった。
「弓親、お前…後ろ向いてみろ。」
『後ろ?』
その声と同時、高校生が振り返る。
俺の目には、目を大きく開き、携帯電話を耳から離す弓親の姿が映る。
「弓親、これ、どういう…」
俺が言い終える前に、弓親は俺に背を向け走り始めた。
必死に追い掛ける。
俺のほうが足は速いだろうに、なかなか弓親との差が埋まらない。
当初の目的地だった駅を通り過ぎ、駅近くの大通りを通り抜け、少し入り組んだ路地に入ったところで、やっと弓親を捕まえた。
弓親はその場に座り込み、二人して肩で息をする。
「バレ、ちゃった…や…」
苦しそうに話す弓親の目は、いつものように少し笑っていた。
「お前…いったいこれ、どういうことだよ…」
「どういうこともなにも、こういうことさ。僕は本当は高校生。ただのガキ。ごめんね、今まで騙してて。」
「あー…もう意味わかんねぇ…」
走った疲れと混乱で、俺もその場に座り込んだ。
少し落ち着いたところで、弓親のほうに顔を上げる。
「弓親…、ホントはいくつだ?」
「16。高2。」
「まじかよ…全然わからなかった…」
「だろうね。僕、よく授業サボって大学の講義に潜り込むけど、バレたことないもん。」
「お前なぁ…」
その後に言葉が続かず、沈黙になってしまう。
大通りから少ししか離れていない路地だというのに、この静さに気まずくなる。
しばらくして、弓親はまたごめんね、と言った。
その言葉をきっかけに、俺はようやく聞く決心がついて、大きく息を吐いた後、切り出した。
「なんで大学生だなんて嘘ついたんだ?」
「……僕、一角のこと、随分前から知ってた。電車にスキンヘッドの人がいるんだよ?怖い人なんじゃないかって思ったんだけど、すごく一角に興味を持ったんだ。それで一角のこと見てたら、毎日ちゃんと大学行くし、おばあさんに席譲ったりもしてて…」
弓親は膝を抱えるように座り直し、地面を見ながら話を続けた。
「いい人なんだなってわかってからは、何度か一角の隣に座ってみた。あ、ストーカーじゃないよ?『この人の隣に座れれば何かいいことがある』って自分で作ったおまじないのようなもので……いつか、この人と話してみたいってずっと思ってた。」
そして、俺を見てにこりと笑って、僕が隣にいたなんて知らなかったでしょ?とだけ言って、また目を伏せた。
少しだけ見えた弓親の目が濡れていた気がして、どうしようかと考えたが何も思い付かず、結局俺は黙って弓親の話に耳を傾けた。
「一角が携帯忘れてったあの日も、僕は隣に座ってたんだ。携帯に気付いたのが、一角が降りた次の駅。どうしようか考えて、僕の降りる駅までまだあるから、それまでとりあえず持っていようと思って。」
「そしたら、俺から電話が来た?」
「そう。本当にびっくりしたよ。表示が出ないから誰からかかってきてのるかわからないし、下手にとるのはまずいと思ったんだ。だけど、ずっと鳴ってるから出てみたら、一角だった。それで、とっさに自分も一角と同じ大学だって嘘をついたんだ。一角と友達になりたかったから…。」
弓親は本当は高校生だということ。
弓親は前から俺を知っていたということ。
弓親は俺と、友達になりたいと思っていたこと。
今まで知らなかったことを一気に知らされ、俺は呆然とした。
頭の中を整理するのに必死だった。
「一角と友達になったあと、本当のことを打ち明ける機会はいくらでもあったし、僕もいつか打ち明けるつもりだったんだ。でも、できなかった…。高校生ってバレたら、一角は僕に付き合ってくれなくなるかな、とか考えると怖くなっちゃって。」
「べつに俺は、弓親が高校生だろうと気にしねぇぞ?」
「うん…ありがとう。一角ならそう言ってくれるって思ってた。でも、ダメだよ。一角を騙してるんだって、僕にはずっと罪悪感があった…しかも結局、僕から打ち明けられなくて…本当のことがバレたからって、『じゃあ、そういうことだから』って今までどおり友達でいるのは…僕には、無理だよ…。」
弓親はそう言って立ち上がり、俺に背中を向けた。
「一角、騙してて本当にごめん…でも、すごく楽しかったよ。」
別れの気配に俺は立ち上がり、ありがとうと言いかける弓親の細い腕を掴んだ。
弓親は驚いて振り返る。
その瞳は、今にも涙が溢れそうなくらい潤んでいた。
「俺も…弓親を騙してた…。」
もしかしたら、これで弓親との繋がりが切れてしまうかもしれない。
そう考えると、今まで秘めていたこの想いを、弓親に伝えないと後悔すると思った。
「お前と一緒にいるのは、すげぇ楽しかった。けどな、途中から弓親のこと…ダチだと思えなくなってたんだ…。俺…、弓親のこと、好きになっちまってた。」
その言葉を言った途端、弓親の頬を涙が伝った。
目の前にある表情は愕然としたもので、俺は、言ってはいけない言葉をついに口にしてしまったんだと感じた。
「わりぃ…謝んなきゃいけねぇのは俺のほうだ。俺は弓親を、そういう目で見てんのに、一緒にいられればって、友達の立場を利用してた…。そうやって、弓親を騙してたんだよ。」
そっと、弓親の腕を離すと、その腕は人形のように下ろされ、弓親は依然、固まったままだった。
「キモい、よな…けど、弓親が今までどおり俺とダチでいられねぇなら、俺が弓親のこと好きだって伝えとくべきだって思った。友達関係がダメなら恋人関係で、なんて馬鹿なことは言わねぇ…けど、やっぱり俺は…、友達でいいから、弓親の傍にいたいんだ。」
俺は自分の携帯を取り出すと、弓親の目の前で弓親の番号登録を消してみせた。
「弓親が高校生だろうと、俺の気持ちは変わらねぇ。…もし、お前が俺と友達でいてもいいって思えたら…そしたら、俺に電話してくれねぇか?」
俺が見つめると、弓親はばっと視線を外し、俯いた。
決して、俺のほうを見ようとはしない。
答えなど、当然返ってこない。
予想していたリアクションとはいえ、やっぱり少し傷ついた。
「じゃあ…、な…」
俺は弓親に背を向け、走った。
駅を通り過ぎ、大学を通り過ぎでも走り続けた。
奥歯を噛み締めて、いつまでも走っていたい気分だった。
弓親と会わなくなって、一週間がたとうとしていた。
隣で笑っていた奴がいなくなるというのは、こんなにも寂しい気分になるのかと実感した。
だが、告白したことを後悔してはいなかった。
きっと、告白していないほうがずっと後悔していただろうから。
そして、告白と同時に諦めもしていた。
俺の隣で弓親が笑うことは、二度とないだろうと。
それぐらい決心していたはずなのに、友達関係でいてもいいと思えたら電話してくれだなんて、己の未練がましさに呆れていた。
この一週間で、何十回目になる溜息をつくと、机の上で携帯が震えた。
ディスプレイには、電話帳に登録していない電話代が表示されている。
そっと手にとり、通話ボタンを押した。
「もしもし…?」
『もしもし……僕だけど…』
一週間ぶりに聞く声。
ずっと聞きたかった声。
たった一週間聞いていなかっただけなのに、その声はひどく懐かしく聞こえた。
『僕、あのあとたくさん考えたんだ…。だけど……、やっぱり、友達には戻れない…』
「あぁ…、だろうな。悪い。変なこと言って。」
期待はしていなかった。
電話してくれたというだけで、十分だった。
『でも…その代わりと言ったらなんだけど…僕が、高校生でもいいなら……』
弓親の言葉がそこで止まった。
不自然に続く沈黙。
「弓親、どうした?」
『その…恋人関係として、始められない、かな…?』
その電話は、友情の終わりを告げるものであり、恋の始まりを告げるものだった。
END
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大好きなサイト様、Freakish!様にストーカーの如く通っていたら、55555番を踏んでしまい、キリリクを嬉してさせて頂き、頂いたとっても素敵小説!
なんだこの萌え設定は!!(←大丈夫か)
リクエスト内容は、『現代パロで携帯から始まる角弓の恋愛』でさせてもらいました!
したら、本当…もう私のかなりドツボな小説を書いてくださったという!
流石侑兎様!
まず何が萌えって…
弓親が一角と友達になりたくて、嘘をついてたところ!!
これはツボでしたかなり!!
もうもうもうっ!!
可愛いぞコンチクショー!!
んで、一角の告白…!!
友達として見れなくなってた一角の告白に胸きゅんさせられましたよ!
こんなこと言われたら私は鼻血もんですね!
ってか、高校生な弓親を想像するだけで萌える私は変態だと思う←
本当、侑兎様ありがとうございました!!
55555番踏めて幸せですw
ってことで、55555HITおめでとうございました!(←遅っ!)