夢幻黎明
□お爺様と無口な忍
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東軍の軍師として東軍に入った薫は事を自分の先祖からの血縁者である、北条氏政へ報告をしようと小田原に訪れた。
同盟国の主ということもあり、護衛はつけなくても難なく小田原城へ入城することを許された。
「薫か!久方ぶりじゃの」
「お久しぶり、お爺様」
庭の見える通路に腰を下ろしている北条氏政を見つけた。薫は自然の流れで北条の横に腰かけた。目の前に見える桜の木は、もうすぐ春を告げる。蕾が愛らしく二人の目に見えた。
「じき春じゃのう」
「そうだね」
敬愛する北条――血の繋がりはない――が言えば、薫は相槌を打った。春は好きな方だ。冬の何倍も。
「春は恋する季節らしいぞ」
「そうだね、お爺様」
「そこでじゃ、薫。そろそろそなたも嫁ぐことを考えてはどう」
「小太郎ー、お茶ちょうだーい」
光の速さのごとく遮った。
2『お爺様と無口な忍』