長編小説

□[11]メール
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口裂け女から何とか逃げ切った僕たちは取りあえずゲームを中断する事にした。

「何とかしてこのゲームを終了させる事は出来ないのかな

すると溜め息のついでの様に亮太が答える。

「そりゃ120%無理だな。命賭けてもいいぜ」

それは僕だってわかっていた。だけど…

「やっぱり僕はこのゲームを終了させないといけないと思うんだ」

「それは誰でも同じ。だけど今の俺たちは何も出来ないだろ」

首を傾げながら亮太が答えた。こう見ると人一倍子供っぽく見える。

「それは…」

「それに、うかつに動くと又犠牲者が出るかもしれない。了みたいに…俺はもう後悔はしたくない」

亮太はかなり真剣に言っているようだ。やはりかなりショックだったのだろう。了の死が…

「僕も…」

君明がゆっくり口を開く。

「…もう誰も失いたくない…」

その言葉を聞いて亮太が君明に優しく微笑みかける。

「まぁいいじゃん。もうこんな時間だし…俺はまぁ帰るな」

どうやらこのゲームの中に入って出てきたら僕の部屋にみんな来てしまっていたようだった。



よく考えてみたらこんな時間と言ってもまだ16時だ。

「あ、あのさ亮太。まだ16時だよ

はぁ…と呆れたような声で亮太が答える。

「あのな、俺たちはまだスイッチを押してない。だから17時になったら施設に戻らなくちゃならない」

「戻らなくてもこのまま逃げたら…「そんなに甘かったら苦労はないよ」」

僕の声に重なるように亮太が言う。

「俺たち実験台のみんなは、発信機がどこかに取り付けられてる。」

「え発信機どこに

ふぅ…と亮太が溜め息をした。

「だぁかぁらぁ俺だってどこに付いてるかわからねぇんだよ

そそくさと亮太が君明の車椅子を押す。



そして亮太が独り言のように小さな声で呟いた。

「酷いよなぁ…」

何のことかわけがわからなかったので聞き返してしまった。

「え



「俺たち何にも悪いことしてないのに。何が青少年自殺実験だよ…俺たちの人生奪って…」


僕の目には涙が自然と溜まっていた。すると亮太が元気よく僕の方に振り返った。

「なんてな。何目に涙溜めてんだよ。俺は6年間こういう生活をしてきたんだ。もう慣れたよ。んじゃ又明日な」

亮太はそう言って帰って行った。


亮太の背中はまるで何かを訴えているようだった。



その時僕は思ったんだ。




亮太と君明を連れて解放してやろうと。


だがこれが僕にとってどれほど困難なことか、どれほど悪いことか自分でもわかっていた。




取りあえず僕はゲームにメールが入っているといけないので再びゲームを起動させることにした。



着信メール1件



メールが1件きていた。送ってきた人は「安藤梨之」となっている。誰だ


僕はメールの内容を見ることにした。


【貴方はまだレベルが低いよね。私はレベルの低い人最優先で言って回ってるの。最近レベルSSランクのモンスターが死の森に増えてるから気をつけて、あまり死の森に近づかないようにね。それからSSランクのモンスターを倒すなら絶対に頭脳戦を選ぶこと】



(何て長い文だいやまずこの人に感謝しないとな。)

少なくとも安藤梨之というひとは安全な人だろう。一応メールを返信しておこう。


【アドバイスありがとうございます。梨之さんはレベル高いんですか?】


ちょっと失礼な文でもあるがメールを送信した。


SSランクのモンスター…






僕はそのことを頭に浮かばせると背筋に寒気が走った。

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