book2
□闇の中の幸せ
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【闇の中の幸せ】
(※ハルも戦闘部員なパロディです)
どこを歩いても血で赤く染まっている道。あの独特な臭いを嗅ぎながら、お気に入りの靴を血液に浸して帰りたくはないけれど、血がついてない道を歩く方が無謀。まわりを見渡せば、あっちもこっちもマフィアさんがいる。数年前まで住んでいた平和な並盛が少しだけ恋しくなった。
アジトに入ると、真っ白な床に赤い足跡がくっきりとついてしまった。いつもピカピカに掃除をしてくれる京子ちゃんに、こんな汚れたものを見せるわけにはいかない。その場で靴を脱いで片手で持って、今自分が着ている真っ黒なスーツのポケットに入れておいたハンカチで、汚れた床を拭いた。このハンカチは後で燃やそう。ゴミ箱に捨てると、それを処理してくれる京子ちゃんの目に入ってしまうかもしれないし。
自分の部屋の前に着くと、扉の横に設置しているセキュリティシステムに、自分で設定したパスワードを入力する。ピピピ、という電子音と同時に扉が自動で開いたので部屋に入れば、人がいた。その人とは、恋人兼仕事仲間で、この部屋のパスワードを知っている。ちなみに、自分以外にパスワードを知っているのは彼だけ。(だって着替え中に誰かが入ってきたり、傷の手当をしてる最中に京子ちゃんに入ってこられたら困るじゃない)
「おかえり」
「ただいまです。…スーツ姿ってことは、今からお仕事ですか?」
「もうすぐ、ね。と言っても、その辺にいる草食動物の相手をするだけ」
「ふふっ。間違えてボンゴレのマフィアを殴っちゃ駄目ですからね?」
「君じゃあるまいし、そんなみっともない事はしない」
「はひ!ハルだってそんな事しません」
持っていた靴を床に置いて、ベッドに座っている彼の隣に自分も座ると、何だか心が落ち着いた。ああ、今日も生きて帰って来られたのだと実感する。彼ほど強ければこんな思いを毎回しなくて済むのだけれど、自分が弱いから仕方がない。
彼の膝に自分の頭を乗せると、彼が優しく頭を撫でてくれた。普段はこんな事は滅多にしてくれないけど、こういう時だけしてくれる。何だかんだ言って、彼は優しいと思う。
「……この前買ってくれたハンカチ、汚しちゃいました。血を拭いたので、頑張って洗っても綺麗には消えないです。ごめんなさい」
「いいよそれくらい。あんな安物、いくらでも買ってあげる」
「ありがとうございます」
お礼を言った瞬間、彼のケータイが鳴った。彼が電話に出ると、ツナさんの声が聞こえてきた。そろそろ彼も仕事をしなければいけないのだ。体を起こすと、電話を終えた彼がベッドから立ち上がった。表情を引き締めた彼はやっぱりかっこいい。
「次はどんなのがいい?」
「え?…うーんと、柄が無くて黒色のが欲しいです」
「この前みたいな花柄や黄色じゃなくていいの?」
「だって汚れたら使い物にならないですし。デザイン重視はこの前で終わりです」
「分かった」
少し申し訳無く思いながらもお願いしますと頼むと、彼はこっちを向いて穏やかな表情をしてくれた。なので自分も彼に向かって微笑むと、彼はもう一度頭を撫でてくれた。
「行ってらっしゃい、恭弥さん」
どうかあなたも無事で帰って来ますように。
end.
無駄に長くてごめんなさい。
もはやハルじゃない。
(2011.05.01)
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