復活!/book*

素直に
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【素直に】




数年ぶりに恭弥さんと喧嘩をしてしまいました。勢いに任せて思わず家を飛び出してしまったハルですが、行くあてが無いうえに喧嘩をした理由を誰にも言いたく無かったので(本当にくだらない理由なんです。)、少し寒いですけど、しばらくの間は近所の公園にいる事にしました。
夜遅くと言う事もあり、公園には誰もいませんでした。ふとハルの目に入ってきた少し古びたブランコに座ってみると、ギィ…という音が静かな公園に響いて、余計に寂しさが増しました。


「…はあ」


出てくるのは後悔とため息だけ。こんな事なら家を飛び出さなきゃ良かったです。小さな事で怒ってしまった自分がとても情けなくて、何だか恥ずかしくなってきました。
今帰っても気まずいだけですし、手っ取り早くメールで謝ろうにも携帯を家に忘れてきてしまいました。…本当に最悪です。


「…やっぱりここにいた」

「……はひ…?」

「帰るよ」


ちょ、ちょっと待て下さい!どうして恭弥さんがハルの目の前にいるんですか!?公園にいるなんて、恭弥さんに言った覚えは全く無いのに…。ハルが呆然としていると、恭弥さんはハルの右腕を引っ張って、そのままゆっくりと歩き始めました。しかも、ハルが気付いた時には既に公園を出ていたのです。


「…どうして、ハルがいる場所が分かったんですか?」

「だって君、昔よく公園に来てたじゃない」


はひ、そう言えば…。
今から十年前。ちょうどハルと恭弥さんが付き合い始めた頃。ハルと恭弥さんは些細な事で毎日の様に喧嘩をしていました(と言っても、小さな口喧嘩でしたが)。そして、喧嘩で拗ねたハルは家に帰る途中、公園に寄って一人反省会をしていました。…そんな時は必ず、恭弥さんは公園に来てくれて、話し合ったり仲直りをしたりしました。はひ、なんだか懐かしいです。


「わざわざ覚えててくれたんですか?そんな昔のこと」

「…別に。何となく思い出しただけ」

「…ふふっ!」


何だか嬉しくて。思わず笑みが溢れてしまいました。すると恭弥さんは少し頬を染めながら(きっと本人は気付いて無いでしょうけど)、ハルのことを軽く睨み付けてきました。でも全然怖く無いのでしばらくの間笑っていると、咬み殺すと言われてしまいました。それはさすがに嫌なので、ハルは頑張って笑いを堪えました。


「恭弥さん」

「何?」

「腕よりも、手の方がハルは嬉しいんですけど」


どうでしょうか?と尋ねてみると、恭弥さんは掴んでいたハルの腕を離して、ハルの右手を繋いでくれました。今まで引っ張られるようにして恭弥さんの後ろを歩いていたハルでしたが、手を繋いでくれたので、恭弥さんの隣で歩くことが出来ました。


「ふふふっ!」

「…単純だね」


そういう恭弥さんだって。口角あがってますよ?(口に出したら不機嫌になりそうなので言いませんが)…何だか、喧嘩をしていたのが馬鹿馬鹿しくなってきました。今なら、意地っ張りな彼も許してくれるでしょうか?


「…き、恭弥さん」

「何?」

「急に家を出ちゃったりして、ごめんなさい」


恭弥さんは顔を歪めたりせず、気にしてないと言ってくれました。はひ、とりあえず仲直り達成です。ハルがひと安心したその時、恭弥さんは突然立ち止まりました。


「恭弥さん?」

「ねえハル、覚えてる?」


何をですか?と尋ねようとした瞬間、恭弥さんはハルのおでこに、ほんの一瞬のキスをしてくれました。
そう言えば…十年前。仲直りをした後、雲雀さんはハルのおでこに必ずキスをしてくれました。その後は凄く恥ずかしかったけれど、それ以上に凄く嬉しかったんですよね…。


「…思い出しました」

「そう」

「何年経っても、やっぱり恥ずかしいです。…けれど、」

「?」

「凄く幸せな気分です」

「…ワオ」


end.





無駄に長い…orz

リクエスト通りじゃ無かったらごめんなさい。もし悪い所がありましたら書き直すので、気軽にご報告下さいね(`・ω・´)

長らくの間待たせてしまって申し訳ありませんでした。

季穏さま、キリ番を踏んで下さってありがとうございました!


(2010.04.07)



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