復活!/book*
□水玉模様
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【水玉模様】
「こんにちは!雲雀さん」
「……は?」
「はひ?」
雲雀は唖然とした。応接室に入ってきたハルは、全身ずぶ濡れだったのだ。髪の毛や制服から水が落ち、ハルが立っている床下には水溜まりが出来ていた。
「何その格好」
「あー、これには訳がありまし…っくしゅん!」
寒さに耐え、小刻みに震えているハルに気付いた雲雀は小さくため息をついた。そして、小さなハンカチで髪の毛などを拭き始めたハルに、さっきまで自分が羽織っていた制服の上着を投げつけた。
「はひっ!」
「寒いんでしょ?」
「で、でもハルびちょびちょですし…上着濡れちゃいます」
「いいから早く着なよ」
うざったそうな表情をしながら話す雲雀に、ハルは少し口ごもった。返したい気持ちは山々だったが、今の雲雀に返すのはとても無理な状況だったので、ハルは渋々と雲雀の上着を羽織った。
「あったかいですー…」
「で、何で君はそんなに濡れてるの?」
「あ、それはですねー。貸しちゃったんですよ、傘を」
「誰に?」
「ツナさんに、です!」
さっきまでうざったそうな表情をしていた雲雀だったが、にこりと微笑みながら言ったハルの一言で、表情は変わった。眉間に皺を寄せ、さっきよりも慎重な態度でハルの会話に耳を傾けた。
「ここに来る途中に、ツナさんに会ったんですよ。傘が無くて困っていたので、傘を貸したんです。そして、ツナさんとさよならした瞬間に…小降りだった雨が、急にどしゃ降りになっちゃったんです。」
言い終えた直後、ハルは再びくしゃみをした。鼻をすするハルにティッシュを渡せば、お礼の笑みが返ってきた。
「…馬鹿じゃないの?」
「え?」
「傘なんか貸さずに、そのまま一緒に帰れば良かったのに」
雲雀の言葉に目を見開くハル。そしてその数秒後、ハルは眉をへの字にして、顔を赤らめながら笑った。
「駄目ですよ〜。そんな事したら、ツナさんの邪魔なっちゃいますもん!」
「邪魔?」
「はい。だって、ツナさんが京子ちゃんと相合い傘を出来るチャンスを、ハルが邪魔したらいけないですもん!」
雲雀はぽかんと口を開けた。ハルの行動に驚いたという事よりも、まず話の内容に頭が追い付かなかった。
「沢田の事、好きじゃないの?」
「はひ!?も、もしかして雲雀さん、ツナさんと京子ちゃんが付き合ってるの、知らなかったんですか?」
雲雀が沈黙すると、ハルは驚いた表情で雲雀を見つめた。そんなハルを無意識に睨み付ける雲雀に気付いたハルは、慌てて表情を元に戻して、嬉しそうに話し始めた。
「ツナさんと京子ちゃん、毎日一緒に帰ってるんですよ。さっきの相合い傘、本当に羨ましかったです。…雲雀さん!」
「何?」
ハルは窓を人差し指で差した。窓から見える外の風景は、雨雲で真っ暗で、先程とは変わらずどしゃ降りの雨が降っていた。
「ハルは傘を持っていません。このままでは、せっかく乾いた鞄や髪の毛が、またびちょびちょに濡れてしまいます。」
「…だから?」
「だからですねー、」
ハルは照れた様に顔を赤らめながら、とびっきりの笑顔で雲雀に言った。
「ハルと一緒に、帰って下さい!」
end.
長い間待たせてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
お気に召されない点がありましたらご報告下さい。書き直し上等なので(`・ω・´)
(2009,07,12)
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