復活!/book*

あの子になりたい
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【あの子になりたい】




ボンゴレの雲の守護者、雲雀恭弥。骸様に対してもの凄い敵対心を持っていて、初めて彼を知った時はなんて命知らずな人なんだろうと思った。だけど、戦場で見る彼の圧倒的な強さやなんとも楽しそうな表情がだんだん気になり始めていって、今では当たり前のように無意識に彼を目で追ってしまうようになった。目が合いますようにと祈りながら控えめに彼を見つめてみるけど、眼中に無しと言われてるみたいに全く彼はこっちを向いてくれない。むしろ、わざと向けてくれないみたい。もし、もしも私が骸様と関係の無い普通の女の子だったら、彼と目が合うくらいは出来たのかな。例えば、雲雀さんと同じ学校の京子ちゃんや、戦いなんて全く似合わないハルちゃんみたいな普通の女の子だったら…。


「クロームちゃーん!」

「っ!…ハルちゃん……」


なんてタイミング。後ろを振り返ると、少し遠くの距離にいるハルちゃんがこちらに向かって走っている。歩いていた足を止めてハルちゃんに手を小さく振ってみると、ハルちゃんはにこにこと愛嬌抜群の可愛い笑顔で嬉しそうに手を振り返してくれた。


「ふぅ、やっと追い付きました…クロームちゃんもお出掛けですか?」

「うん、ちょっと散歩。あれ?ハルちゃん、その格好…」


どうしてハルちゃんが並盛中の制服を着ているんだろう。しかもわざわざ日曜日に。するとハルちゃんは眉間に皺を寄せて、ひどく悩ましげな様子で黙りこんだ。あまりの彼女の豹変ぶりに驚いていると、聞いて下さいと弱々しい声で呟いた。


「雲雀さんから、美味しいケーキがあるからおいでってメールでお誘いが来るんです。しかも毎週日曜日。断りたいけど並盛では買えない超人気店のケーキばっかりで、わざわざ画像まで送ってくれるんです!もーハル太っちゃいます!しかもご丁寧に美味しい紅茶までご用意してくれるんです!美味しくて美味しくて、先週なんて五杯も飲んじゃいました。あーもー、今の体重と先月の体重が全然違って」

「…えっと、ハルちゃん?」

「ハッ!す、すいません!制服なのは変装という名のカモフラージュです。意外とバレないものですね!」

「今から…行くの?」

「はい!今日はフルーツたっぷりのふわふわロールケーキらしくて」

「画像、見たい…」


ハルちゃんは携帯電話をスカートのポケットから取り出して、美味しそうですよね等と言いながら画像を見せてくれた。当たり前だけど、メールの差出人の所に雲雀恭弥と表示してある。メールの内容は、三浦早くおいで、とたった一言しか書いて無いけれど、まるでハルちゃんを待ちわびている様にも捉えられる。画像を見てみると、質の良さそうな箱の中にたった一つだけロールケーキが入っている。


「食べるのは、ハルちゃんだけ?」

「そうなんです。雲雀さん、甘いものは嫌いらしくってハルの分しかいつも用意されてないんです」

「ハルちゃんが食べてる間、気まずくなったりしない?」

「いいえ、ハルのおしゃべりに付き合ってくれるのでとっても楽しいですよ!あ、でも食べてる姿を見られるのは恥ずかしくて…」

「……そっか…」


少し一緒に歩いたあと、ハルちゃんとお別れして再び一人になった。一人になると、頭の中でハルちゃんの言葉がぐるぐるとまわる。私は、目が合うことすら出来ないのに。ハルちゃんは、メールをして毎週日曜日に合っててお話まで出来る。別れ際に、餌付けされてるんですかね、とハルちゃんは笑って言っていたけれどその通りと言ってあげても良かったかもしれない。ハルちゃんの分だけのケーキを買って、メールでわざわざ報告して呼び出して、結果的に毎週日曜日に合っている。何これ、なんて分かりやすいの。これってつまりハルちゃんに好意を持ってるってことでしょ?分かってないのはきっと、ハルちゃんだけ。


数日後、スーパーに向かって歩いていると、曲がり角で彼と会った。やっぱり私には、目線さえも合わせてくれない。目線を下に向けて、彼から早く遠ざかろうと早足で歩こうとした瞬間、誰かに名前を呼ばれた。顔をあげると、彼の後ろにハルちゃんがいた。今日は並盛の制服は着ていなくて今どきの流行にのったファッションを着ていた。ナチュラルなメイクもしている。ほんのりと控えめに塗ってあるピンク色のチークが可愛い。


「ハル、行くよ」

「え、はひ!それじゃあクロームちゃん、またっ」


彼はハルちゃんの腕を掴んで強引にハルちゃんを連れていった。よく見ると彼も制服姿ではない。ハルちゃん、といつもよりも大きめの声で彼女の名前を呼んで手を振った。ハルちゃんは嬉しそうに笑って、掴まれていない方の手を振った。けれども彼は目線さえも向けてくれなかった。向けてくれたのは背中、ただそれだけ。


end.





初めましてはるか様。
リクエストして下さった時から今日まで長い時間を待たせてしまい申し訳ありません。素敵なリクエストありがとうございました。お気に召さない所がありましたら報告お願いします。


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