灰男/book*

甘くて、痛い、ある日の出来事
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「神田!次はあれに乗りたいわ」

「あ?(ジェットコースターか)・・・いいぜ」

「ありがとう!」



―――ここは遊園地。
無料券を兄に貰ったリナリーは彼氏である神田を誘い、2人だけの時間(=デート)を楽しんでいた。

・・・そんな2人から数十メートルほど離れた所に




「リナリー可愛いですね(何で神田なんかと・・・)」

「本当,ユウが羨ましい・・あ!アレン、2人が移動したさ!」

「追いますよ、ラビ」

「了解」




2人を偵察(=覗き見?)するアレンとラビの姿があった。








【甘くて、痛い、ある日の出来事】









今から数時間前、アレンとラビはコムイに呼ばれて司令室を訪れていた。


「君たち2人に、大事な任務を頼みたいんだ。」


いつもの少しふざけた様な雰囲気は無く、とても真面目な顔のコムイ。そんな姿を見て、2人の顔つきも変わった。


「任せて下さい。」

「で、任務って何さ?」


ラビが聞いた瞬間、コムイの目がギラリと光った。






バンッ!!!






コムイが机の上に、叩きつける様にある物を思い切り置いた。
それは・・・



「「遊園地無料券・・・!?」」



アレンとラビは呆然とコムイを見つめた。


「リナリーったら酷いんだよ!せっかく僕が無料券を2枚渡したのに、僕じゃなくて神田くんを誘ったんだよ!?僕の予定では、リナリーが僕を誘ってくれて一緒に遊園地に行く予定だったのに・・・台無しじゃないかぁ!!!」






・・・。







「(そんな、お年頃の女の子が実の兄を遊園地に誘うなんてあり得ませんよね)」

「(てかこのシスコン、ちょっと痛すぎるさ・・・)」


2人は心の中でコムイに呆れ果てた。
その時



「と言うことで。2人はリナリーと神田くんの偵察をして来てね!」







・・・。







「「はぁ!?」」


2人はコムイの発言に唖然とした。・・・そして、怒りが段々と込み上げて来たのだった。


「冗談じゃ無いですよ!そんな事に僕たちを利用しないで下さい!」

「大体、男2人で遊園地とかシスコンコムイより痛いさ!!!」

「うるさいうるさい!少しは僕を労ってよぉぉ」



―――そして2人の抵抗は聞き入れられず、現在(=2人を偵察)に至るのであった。



「・・・た、楽しかったね」

ジェットコースターを乗り終え、リナリーは少し青ざめた顔で微笑んだ。

「嘘つくな。声震えてるぞ」

「え!?だ、だって思ったよりも怖くて・・」

「少し休もうぜ」

神田はリナリーの手を掴み、売店の近くに設置してあった椅子に連れて行き、リナリーを座らせた。


「何でも良いのか?」

「えっ?あ、うん」


リナリーが答えると、神田は売店の方へと向かって行った。






――「嘘だ・・あの神田が優しいなんて」

アレンはどんよりとしながら呟いた。

「てか何気に手ぇ繋いだよな?」

「リナリー幸せそうですね」

「ユウもなかなかやるさ〜ってアレン!お前食い過ぎ。」

アレンの目の前にはドリンクLサイズと,ホットドックとアメリカンドックとたこ焼きとフライドポテトとフランクフルトとピザがそれぞれ2つずつ置いてあった。

「へ?だってお腹減るじゃないですか。ラビも食べます?」

「え、遠慮するわ。ってあ!ユウが戻ってきたさ」






――「これで良かったか?」

なんて言いながら神田は、リナリーにソフトクリームを渡した。

「ご、ごめんね神田!お金返すよっ」

「馬鹿かお前は。それぐらいおごらせろ。」

そして神田は、自分の手に持っていたソフトドリンク(中身は緑茶)を一口飲んだ。

「・・・ありがと」

リナリーはふふっと笑った後、ソフトクリームを食べ始めたのだった。






――「(何言ってるか聞き取れないけど)ユウ甘〜い」

「何か別人みたいですね」

「つかオレらさ、こんな事やっててむなしくね?」

「それはNGワードですよ、ラビ。あ,2人が移動しました」

「行くぜ、アレン!ってそれどうする?」

ラビは、アレンがまだ食べ終わってない大量の食料を見ながら言った。

「仕方ない、持っていきますか。ラビ,半分持って下さい」

「は!?ちょっとそれ酷いs「はいはい行きますよー」・・・冷たいさアレン。」


そして2人は大量の食料を持ちながら、なんとかバレない様に神田とリナリーの後を追った。



「神田、最後に・・ね?あれに乗りたいの」

駄目?なんて可愛くリナリーに、神田は息を小さく吐いた。

「・・・好きにしろ」

「! ありがとう」

リナリーは嬉しそうに笑った後、神田の手を引き,あるアトラクションの入口へと向かった。






――「ま、さか,アレに乗るんですか!?」

「あー・・・仕方ないさ。アレはカップルには定番のアトラクションだからな」


アレンとラビが見た物。
それは、とても色鮮やかで巨大な



観覧車だった。





「アレン、俺乗りたくないさ」

「何言ってるんですか!ここまで来たのに今更言わないで下さい」

「お2人様ですね?どうぞお乗り下さい。」

「ほら、ラビ早く」

「・・・はい。」

そしてラビはアレンに手を掴まれながら,渋々中へと入った。






――「わぁ、綺麗・・・」

うっとりとした顔でリナリーは呟いた。

「今日はありがとね、神田」

ニコリとリナリーは微笑む。神田は照れくさそうに、別に,と小さく言った。

「隣座っていい?」

「ああ」

そしてリナリーは神田の隣に座り、ゆっくりと肩を寄せた。






――「あぁぁ乗ってしまったさ!男同士で観覧車とかキツすぎる・・・」

ラビは頭をかかえながらうなだれる。それを見たアレンはため息を溢した。

「ごちゃごちゃうるさいですよ・・あ!?み、見て下さいラビ!2人がっ」

「え?・・っ!!!」






――「だ、駄目だよ神田。誰かに見られちゃうよ」

リナリーは焦りながら拒む。が、神田の顔は,どんどん自分の方に近付いてくるばかりだ。

「黙れ」

「な!?そんな・・・ん」






――「「(キスしたぁぁぁ!!!)」」

アレンとラビは顔を少し赤く染めながら,心の中で大絶叫した。

「・・・どこまでヤったんでしょうね、あの2人。」

ポツリと低いトーンでアレンが呟いた。

「ちょ、アレン。その言い方は駄目さ」

ラビは慌ててアレンの発言につっこむ。

「あ、ラビも食べます?この残り物。」

アレンはさっき売店で買った食料を食べながら言った。

「こうなったら、ヤケ食いさね」

ラビは食料に手をのばした。






――「・・・ぷは!もう、長すぎだよ」

顔を真っ赤にしながらリナリーは言った。

「でも気持ち良かっただろ?」

「馬鹿っ!もう知らな・・・え!?」

突然,リナリーは驚き、恐る恐る指を差した。





「あれって、アレンくんとラビだよね?」





「は?何言って・・・!?」

ガラス越しから見える2人組は、白髪と赤髪で,体型や髪型からしてアレンとラビだった。

「さっきの、見られたかもな」

神田が呟くと、リナリーの顔はさっきよりも真っ赤になった。

「や、やだっどうしよう・・・」

「取り敢えず、コレ降りた後に話を聞こうぜ」

「うん!」




「はぁ、今日は疲れたさ」

観覧車から降り、ラビは小さく息を吐いた。

「ですね。もう時間も遅いですし帰りませんか?」

「さんせ〜i「おいてめェら、何でここに居るんだ?」・・・あ゙」

肩をポンっと叩かれ恐る恐る振り向くと、もの凄くイライラした神田と,その横で呆然とするリナリーがいた。

「いや、あの、コレはっ」

「男だけで遊園地来るとかおかしいよなぁ?」

神田は黒いオーラを出しながら、ゆっくりとアレンとラビとの距離を縮める。

「ま、待って下さい!コレには事情があって,コムイさんに頼まれたんです!」

「兄さんが!?」

最悪だわ・・と言いながら、リナリーはため息をついた。

「で、いつからつけてたんだよ」

神田の言葉に、2人はギクリとした。

「え、っと・・・」

「2人がお化け屋敷に入ったぐらいからです」

「そ、それって1番最初からじゃない!」

リナリーは呆然としながら言った。



「・・・覚悟は出来てるか?」



神田は持ってきてあった六幻を取りだした。

「な!?何でそんな物持ってきてるんですかっ!」

「アクマが出た時の為だ。今日はアクマが出ねぇし,必要無いと思ってたが・・・持ってきて正解だった」

そして、シュッと六幻の刃先を2人の方に向けた。




「ちょっと待って神田!」



リナリーは一旦ストップをかけた。アレンとラビは、止めてくれたリナリーをキラキラした目で見つめた。



「さっきの、見た?」



恐る恐る呟くと、2人の顔が少し赤くなったのが分かった。

「! 神田、止めてごめんね」

リナリーは一歩下がってから、微笑みながら言った。

「・・・六幻、抜刀!!!」

「「ギャァァァァァァ」」






「ねぇ兄さん」

「ん〜?何だいリナリー」

遊園地から帰ってきたリナリーは、一番最初にコムイの所へと訪れた。



「よくもデートを邪魔する様な事をしてくれたわね?」



妖しく微笑むリナリー。コムイの動きはピタリと固まった。

「リ、リナリー?(バレてる!!!)」

「ちょっとは反省してね?・・・イノセンス、発動!」

「ギャァァァァァァ」


数日後、コムイからお詫びの品物として水族館の無料券を貰ったリナリーは,再び神田を誘い,2人っきりの時間を楽しんだそうな・・・


end.





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