復活!/book1

alcohol
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【alcohol】
(※10年後設定,綱京含みます)




「はひー…」

「ハルちゃん大丈夫?」

「…駄目ね。完全に酔ってるわ。京子、あんたの旦那に連絡してくれる?」

「分かった」


…ああ、やっちゃいました。
久しぶりの京子ちゃんと花ちゃんとのお食事会に、尽きる事のないガールズトーク。それはあまりにも楽しくって楽しくって。
調子に乗ってしまったハルは、お酒が弱いのにも関わらず、ビールを二杯も飲んでしまいました。二杯目を注文する時、花ちゃんと京子ちゃんはハルの事をわざわざ止めてくれたのに。どうしてハルは言うことを聞けなかったのでしょうか。…きっとその時には、ハルはすでに酔ってしまってたんでしょうね。だって、ここら辺から記憶が曖昧なんですもの。


「ハルちゃん、もうすぐツナくんがお迎えに来てくれるからね?車乗ってって」

「す、すいま、せん…」

「気持ち悪くない?」

「はひぃ…」


ああ情けない。
頭は働いているのに、思い通りに喋ることが出来ません。瞼はとにかく重たくて、やっとの思いで開けても視界がぼやけて無意味。焦点が上手くあわなくて気持ちが悪いので、ツナさんが来て下さるまで、ハルは顔を伏せることにしました。そんなハルの頭を優しく撫でてくれている京子ちゃん。バーのマスターから、わざわざお水をもらってくれた花ちゃん。…二人の優しさに涙が出そうです。


「…あら」


花ちゃんの声と同時に、お店のドアについている鈴が鳴ったのが聞こえてきました。ハルの頭を撫でてくれていた京子ちゃんの手の動きがぴたりと止まりました。…きっと、ツナさんが迎えに来て下さったのでしょう。ツナさんに謝罪するべく、ハルは伏せていた顔を上げて、自分の顔を後ろに向けました。
ぼやける視界の中、最初に分かったのは黒色。…あれ?ツナさんって、髪色変えましたっけ?


「…酷い顔」

「……はひ…?」

「早く立ちなよ」


えっと…ハルの見間違いじゃないですよね?だってツナさんはこんなに口調が悪く無いですもん。
どうして恭弥さんがこんな所にいるのでしょうか?


「良かったわね、ハル」

「へ…?」

「ハルちゃん、立てる?」

「え、え…ひっ!?」


立とうとした瞬間、恭弥さんに片腕を引っ張られて、あっという間に背中に乗せられていました。…はひ、この歳になっておんぶをされるとは、思ってもみませんでしたよ。


「ハルちゃん、またね」

「明日はゆっくり休みなさいよ」

「は、はひ…」


そして気付けば、ハルは京子ちゃんと花ちゃんに背を向けていて、ひんやりとした外の微風を肌で感じていました。…あ、お会計をするのを忘れてました。しかも二人にお礼を言えずに出てきてしまいましたし。また今度、二人に会わなきゃですね。


「馬鹿じゃないの」

「う…」

「飲み過ぎるなって言ったはずだけど」


確かに。お食事会に行く事を報告した日も今日の朝も、恭弥さんはハルに飲み過ぎるなと注意をして下さりました。反論出来なくて黙っていると、恭弥さんはハルの方に顔を向けました。珍しいと思いながらも恭弥さんを見ると…彼の口角がいつもより上がっているのが分かりました。


「次やったら、それなりの事はしてもらうから」


ああ、笑ってる…。
それなりの事ってどんな事なんですか?なんて冗談でも聞けません。とりあえず、今日の所は見逃して下さるそうなのでひと安心。もう二度とお酒は飲み過ぎない様にしようと誓った後、ハルは重たい瞼を閉じました。


「おやすみ、ハル」


おやすみなさい、旦那様。


end.





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(2010.03.06)



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