復活!/book1

振り回したもん勝ち
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【振り回したもん勝ち】




ツンデレな彼氏から、突然のメールでのお呼びだし。部活が終わったら並盛公園に来い、と一言。なんですかこの上から目線の素っ気ない文章は。訳が分からないけれど、とりあえず彼に返信しなくては。ただ今の時刻は午後五時半。今から行っても大丈夫ですか?と送れば、早く来いと送られて来ました。普通彼氏なら、部活お疲れ様。急がなくていいからねって送るべきだと思うんですけど。…まあそんなメールが彼から送られてきたら、気持ち悪くて吐いちゃうかもしれないですけどね。何があったのかはさっぱり分かりませんが、とりあえずはや歩きで向かってみましょう。


「…家出でもしてきたんですか?」

「冗談は顔だけにしろよアホ女」

「こんな小さなジョークが通じないなんてまだまだですね、タコヘッドさん」


人気(ひとけ)の無い並盛公園に着くと、ハルの彼氏さんはベンチに座っていました。とても行儀が良いと言える座り方ではありませんでしたが、この見るからに不良らしい見た目で大人しく座っている方が、彼には不似合いですよね。遅くなりましたと一応お詫びを言いながら隣に座ると、ケッと言われました。なんですかその失礼な態度。ハルはあなたの彼氏ですよねと本気で尋ねたくなります、本当に。


「で、ハルに何の用ですか?もしかして、ハルに会いたい病にでもなりました?」

「んな気持ち悪い病気絶対かかんねえから安心しろ。……ほら、よ」


そっぽを向いたまま、可愛くラッピングされた小さな箱を渡されました。どういうつもりなんだと首を傾げていると、彼は何か言いたげな顔で口を金魚のようにパクパクさせながらハルを見てきました。


「おま…っ、このアホ女!何で気付かねえんだよ!」

「はひ!さっきから失礼ですよ獄寺さ…ん?」


ラッピングのリボンをよく見てみると、whitedayと細かい字でプリントしてありました。ホワイトデー?…ああ、そっか!そういえば今日は三月十四日。本当に、きれいさっぱり忘れてました。


「わざわざハルの為に買ってきてくれたんですか?」

「なっ!…一ヶ月前、お返しくれなきゃ口聞かないって言ったのお前だろうが」


それ、ジョークだったんですけど。ちょっとのからかいを含めて言ったつもりだったんですけど、まさか本気にしちゃうとは思ってもみませんでした。
箱を開けると、可愛い熊型のチョコレートが入っていました。想像よりも遥かにまともなチョコレートで、ハルは驚きを隠せません。ちらりと横目で彼を見ると、照れ隠しなのか彼はハルとは逆の方に顔を向けています。…でも残念でした。そのおかげで真っ赤な耳がばっちり見えます。きっと顔も真っ赤に違いありません。


「獄寺さん」

「あ?」

「何だかんだ言って、ハルって愛されてますよねー」

「ってめ…!」

「ハルも愛してますよ」


ありがとうございますとお礼を言うと、なぜか舌打ちされました。まあきっと、照れ隠しなんでしょうけど。
チョコレートを鞄に入れると、彼が立ち上がって手を差し伸べてくれました。外は真っ暗。きっといつものように家まで送ってくれるのでしょう。彼の手を握ると、ハル以上に手が冷たくて驚きました。もしかしたら彼は、ハルが来るまでずっとここで待っててくれた…のかもしれない。あくまでハルの自惚れた予想ですけど、もしそうだったら…ハルは幸福者ですね。


end.





久々の獄ハル


(2011.05.01)



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