復活!/book1
□愛しくて涙
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【愛しくて涙】
(※十年後設定)
「ねえ」
「はひ?」
食器を洗い終えた彼女に手招きすると、彼女は不思議そうな表情をしながら、ソファーに座っている僕の元へやって来た。座れと告げれば、彼女は僕の隣に大人しく座った。
「どうかしました?」
「今日は何の日か知ってる?」
「…えーっと……」
彼女はどうやら今日が何の日かを忘れてしまっている様で、何度も頭を傾げている。すると彼女は立ち上がり、台所の壁にあるカレンダーを見に台所へと向かった。数秒後、彼女の口癖(と言っても奇声に近いかも知れない)が家中に響き渡り、今にも何か言いたげな表情しながら彼女はこちらへ戻って来て、再び僕の隣に座った。
「思い出した?」
「ほ、ホワイトデー…です!」
「正解」
「まさか、ハルに何かくれるんですか!?」
「…まあ、ね」
スーツのポケットに忍ばせておいた物を取りだし、僕の隣で嬉しそうに笑っている彼女の左手の薬指にそれをつけた。その瞬間、彼女は目を見開き、ひどく驚いた様子でそれを見つめていた。
「こ、れ…」
「君と同居を始めてから、今日で三年が経つ」
「そう…でした…」
「ねえ、ハル」
未だに自分の薬指を見つめている彼女の頬を軽く触れると、彼女はうっすらと目に涙を溜めながら、やっと僕に視線を向けてくれた。
「泣かないでよ」
「…だって……」
「…結婚してくれない?」
「は、い…っ」
彼女が小さく頷いた瞬間、溜めていた涙がゆっくりと流れ落ちた。それを僕が手で拭いてあげると、彼女は幸せそうに微笑んだ。
end.
ベタすぎてごめんなさい。
(2010.03.14)
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