復活!/book1

特別チョコレート
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【特別チョコレート】




応接室に入った瞬間、むわっと広がるチョコレートの匂い。そして、机やソファーだけではなく床の上までもを埋め尽くすチョコレート菓子の数を目にしたハルは、不機嫌な表情で立っている雲雀に向かって、くすりと笑って見せた。


「凄い数ですね」

「こんな物いらない」

「はひ、そんなこと言っちゃだめです!」


ハルは雲雀に一喝した後、机の上に置いてあったチョコレート菓子を一つ手に取った。お店に売ってる物かの様に、美しく完璧に作り上げられたそれを、ハルはうっとりとした目で見つめた。


「雲雀さんがうらやましいです。こんなに美味しそうなお菓子をたくさん貰えるなんて…」

「じゃあ君が食べてよ。僕はいらない」

「だーめーでーす!貰った人は責任持って食べるべきです!」


はい。と、ハルが先ほど手に取ったチョコレート菓子を雲雀に渡したが、雲雀は不機嫌な表情のままで、ハルが持っているチョコレート菓子を受け取ろうとはしなかった。ハルはそんな雲雀の態度に諦めず、雲雀の右手を掴み、チョコレート菓子を握らせた。


「…ワオ、強引だね」

「そりゃあそうですよ!一つ一つに、たっくさんの愛情が入っているんですもん!無駄にしてはいけません」

「……」

「分かりました!?」

「…うん」


相変わらず不機嫌な表情のままだったが、雲雀が小さく頷くと、ハルは満足そうに笑った。そして、肩にさげていたスクールバックのチャックを開き、可愛くリボンでラッピングされた箱を取り出した。


「どうぞ」


ハルは微笑みながら、それを雲雀の前に差し出す。


「中身はブラウニーです。甘さ控えめにしたので、食べやすいと思います」

「…そう」


雲雀はハルからそれを受けとると、すぐにリボンをといて箱を開けた。ほのかにする洋酒の香り。ビターテイストだということはすぐに分かった。


「ブランデー?」

「はい。雲雀さんって、お酒が好きそうなイメージだったので」

「何それ」


雲雀の口元が一瞬ゆるむ。先ほどの不機嫌な表情は消え、いつも通りの表情に戻った雲雀を見て、ハルは安堵した。


「愛情は、たっくさん入ってますからね」


ハルがそう言った瞬間、雲雀はハルに視線を向けた。
数秒間の沈黙。言わない方が良かったかも、とハル思い始めたその時、閉じていた雲雀の口がゆっくりと開いた。


「……知ってる」


ハルに向けていた視線をブラウニーに向け、何事も無かったように食べ始める雲雀。そんな雲雀の姿を、ハルは真っ赤にしながら嬉しそうに見つめた。


end.





ハルに嫉妬させても良かったかな…と思ったり(´・ω・`)

皆様ハッピーバレンタイン!


(2010.02.14)



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