復活!/book1

踏み出しても変わらない。それが僕達
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【踏み出しても変わらない。それが僕達】




ああ、また泣いてる。

並中の屋上で、今日もまた、三浦が泣いていた。原因は考えなくても分かる。沢田のせい。昨日も一昨日もその前の日も、三浦は沢田に会ったあと、一人でこっそり屋上に来て、静かに泣いていた。泣いてる理由が沢田絡みってことは、三浦を見ればすぐに分かった。…けれど、詳しい理由は分からない。何度聞いても、三浦は教えてくれなかった。


「…大丈夫?」


声をかければ、彼女は流していた涙を強引に自分の手で拭いて、僕ににこりと笑ってみせた。


「いつもすいません。ハル、帰りますね」


それじゃ。と一言告げて、三浦は駆け足で屋上を出て行った。
三浦は屋上を出て行くギリギリまで僕に笑顔を見せていた。無理して笑わなくていいのに。今日もまた、三浦は一人で帰って行った。


「……誰?」


屋上の出入口から感じた人の気配。誰?なんて、本当は分かってる。だって、あの子がここに来るのも、いつものことだから。


「あ、あの…先生に掃除を頼まれて、私…」


目線を下に向けながら話すのは、三浦の恋敵の笹川京子。ほうきとちり取りを両手に持っている。
昨日は落とし物、一昨日は気分転換、その前の日は…忘れたけど、とにかく、何らかの理由をつけて、放課後よく屋上に来る。


「そう。早く終わらせてよ」

「…え?」

「君が早く帰ってくれないと、ここの鍵を閉めれないから」


ポケットに入っていた屋上の鍵を取り出して見せつけると、笹川は泣きそうな顔で僕を見ていた。


「……すい、ません。」


微かに震えた声を発したあと、笹川は屋上の掃除を始めた。
笹川にとっては少々きつい言い方だったかもしれない。けれど、今ここで笹川に優しさを見せれば、今の僕達の状況は余計に変わらなくなるかもしれない。


「……失礼します…っ」


笹川が屋上から出て行った。もちろん一人で。…けれど、そのまま一人で帰って行った三浦とは違う。今日も笹川は、教室で笹川を待っている沢田に誘われて、二人で帰るに違いない。

そして二人が帰って行くのを確認してから、僕は一人で帰る。…それが変わる傾向は、今のところ見当たらないんだ。


end.





一度書いてみたかったんだ。

大丈夫、後悔はしている。


(2010.01.31)



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