Book

□かきこおり
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『ミィンミンミン…』








「あっ美鶴!かき氷やさんだよっ」

「本当だ」

…多分、20分程歩いただけなのに
僕等は額に大量の汗をかいていた。

美鶴の綺麗な髪も、汗のせいで顔に張り付いている。

「寄ってかない?」


「ワタルが食べたいなら」


美鶴の口元が緩んだ、
この表情の美鶴は何だか優しそうで、
本当に美少年だと思うけど。

普段の美鶴と重ね合わせると、やっぱりちょっと違うかも何て思ってしまう…

「すみませーんっ
レモン味のかき氷二つ下さいっ」

「一つで良いよワタル」


「ふぇ?何で?」







一つなんて…また変な事考えてるんじゃないだろうな…

「だって一つなんて言ったらどっちかが食べれないよ?」


「二人で一つ
食べれば良いだろ」









…やっぱり変な事考えてたんだ…
二人で一つ食べるなんて恋人じゃあるまいし…

全く美鶴は何考えてるんだか…

「…一つ下さい」

「あいよ」

「あぁっ!ちょっと美鶴!」

怒る僕を、本人は楽しそうに見つめる。


もぅっとふくれっつらの僕をさておいて、
美鶴はかき氷を受け取った。

「ワタル持って」

「はぁ…?」

美鶴が頼んだんじゃないか!と言う前に、
美鶴はかき氷を僕に強引に押し付けた。

「あそこのベンチに座ろう」

「ちょっ…美鶴!」

美鶴はさっさとベンチに座って、ちょっと微笑みながら僕に来いよと言う。

…いや実際言ったんじゃなくて、ただそう言ってる様な顔をしているから…



「美鶴って勝手だよね」

ふくれっつらで渋々座る僕を美鶴は楽しそうに見つめる。

そんな美鶴にムッとして、
僕は氷をすくい、口元に運んだ。
いつもそう言う顔で僕を動揺させる…
冷静に僕を見つめる美鶴が少し…
いやかなり憎い。



キーンと頭に痺れる様な痛みが走ったけど、気にせずまた二口めを口に運ぼうと…―

「ワタル」

「ん…あぁ美鶴!!」

僕が二口目を口元に運んだ時、
美鶴がストローを自分の元に無理矢理引き寄せ、
パクッ…と食べてしまった…



呆気にとられる僕をニヤリと見つめて、美鶴は一言

「すっごいしみる…」

なんて言って誤魔化すけど、僕は怒りと、
ほんの少しの恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまった。

「な…なんでわざわざ同じストローで食べるのさ!!こっちのストロー使えよ馬鹿!!」


「こっちの方が美味いんだよ」


「馬鹿…!」


僕はストローを氷にさして、また口元に運ぶ。

熱くなった体もこれで冷めると思って…―

「ワタル
間接キスした」


「はぁっ?!!」

驚いて危うくかき氷を落とすところだった

「かかか…間接キスって
おま…お前は馬鹿っ…馬鹿じゃっ…」


「かもね。
でも間接キスって言うんだよソレ」

ニヤニやしてる美鶴を睨んで、
かき氷を押し付け、ズカズカと家路につこうと歩く。


「ワタル…?」


「もぅミツルとは付き合ってらんないっ!
一人で食べなよね!全部あげるからっ」

怒りと恥ずかしさで震える声でミツルに言うと、
僕は走り出そうと構えた。

「ワタル」

「もぅっうるさ…!!」

ミツルが僕の腕を掴んだので振り向くと、
ミツルの顔が僕の目の前に現れた。

あまりにも近くて息を呑む。

「ごめん、別に怒らすつもりじゃなかったんだ」

「ミツッ…―!?」

ミツルの手が僕の顎に当たって、無理矢理僕の顔が上に向く。

ミツルが熱い息がかかって、気がついたら僕の唇にミツルの唇が重なって…

「ンッ…!…んんミフルッ?!!」

「…―」

カタッとかき氷が落ちて、その音も、キスの時間も何分にも感じた。

これが…甘い時間って言うのかな?

















『ミィンミンミンミーン』























いやいやそんな事より何でこんな事に…!!


「やめっ!ミツルッたらっっ!!」

ドンっとミツルを突き飛ばし、
僕はヘタリと膝をついてしまった。

「…ワタル…可愛い」

「…ばっ…馬鹿っ…
いきなりあんな事するなんて酷いッ!!」

「ワタルが可愛いから…
つい…ね」

カァッと顔が熱くなった…

「馬鹿馬鹿!最低!
美鶴のホモ!僕のファーストキス返せぇ!」

半ば泣きながら僕は走っていた。


















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