恋華の広場

□小さな恋のメロディ<後編>
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「出ていけよ!お前の顔なんか見たくないんだよ!」

「!!」


暴言を吐かれたカガリは、今まで堪えていた涙を一粒零した。俺は、やっとそこで自分の暴言に気付いて焦ったが、カガリは俺が謝ろうと口を開くよりも早く部屋から走り去ってしまった。


「最低な奴だな…俺は」


追い掛ける事もせず、壁に頭を打ち付けた。どうしようもない自己嫌悪に陥り、また涙が浮かんできた。
カガリは何も悪くなくて、イザーク・ジュールも何も悪くない。…ただ、俺が勝手に敗北感を感じたり、焦ったり嫉妬したりしただけだ。
なのに、俺は誰よりも大切なカガリを傷つけた。俺を心配して夕食まで持ってきてくれたのに…。

絨毯の上に落ちてしまった夕食は、今の俺の気持ちを表していた。厚揚げと豆腐のみそ汁が、白飯とおかずとぐちゃぐちゃに混ざり合っていた。
俺の心も、嫉妬や罪悪感でぐちゃぐちゃに混ざり合っていた。本当、救いようのない自分が情けなくて涙が出る。食べられなくなった夕食を片付けながら、一粒また一粒涙が零れ落ちた。
傷つけてしまった罪悪感と、嫌われてしまったと思う恐れは深夜になっても消える事はなかった。

それでも腹は減るので、俺は皆が寝静まった後キッチンに行こうと部屋を出た。そして、ふと隣の部屋に視線を向けると、扉が少し開いていて光が漏れていた。その部屋の主はラクスなので、気になった俺はそっと覗いてみた。
そして、俺は驚いた。ラクスはいつの間にか買ってきた青いコードと奮闘しながら、キラに贈るペットロボを作っていた。
女の子らしいラクスの部屋には、無惨に引きちぎられた青いコードが何本も散らばっていて、ラクスがどれだけがんばっているかを物語っていた。俺は扉を静かに開けて声をかけた。

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