恋華の広場

□小さな恋のメロディ<後編>
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珍しく早く帰宅していたヴィアさんは、無言で泣く俺と声をあげて泣くラクスを見て驚いた。けれど、俺たちは心配するヴィアさんの無視してそれぞれ自室に籠もった。
夕食時になっても、俺は部屋から一歩も出なかった。きっとラクスも同じだと思う。こういう所は、やはり双子なのか似ていた。

何か悩みがあったり、悲しい事があったりしたら、俺たち双子は自室によく籠もっていた。誰にも相談したくないし、相談出来なかった。
今日出された宿題にも手を付けず、ベッドに俯せになっていた。涙はもう止まったけど、カガリとイザーク・ジュールが寄り添っている光景は、瞳を開けていても閉じていても焼き付いて離れなかった。
今時のガキはなっていない――自分達だって、大人達から見たら“今時のガキ”のくせに…。けれど、小学生にとって高校生は大人で雲の上の存在のように思えた。

ぐるぐると同じ事ばかり頭に浮かび、答えを出せないでいると不意に扉からノックの音がした。続いて今一番聞きたくない声が聞こえてきた。


「アスラン…?」


遠慮がちに扉の向こうから声を掛けてきたカガリは、また小さくノックした。そして、返事をしない俺に痺れを切らしたのか、キィと木が軋む音をたてながら扉を開けた。


「アスラン、お腹空いただろ?夕飯、持ってきたから食べないか?」

「…いらない」

「どうしてだ?何か悩みでもあるのか?お母さんが、お前とラクスが泣きながら帰ってきたって心配してたぞ」

「別に何でもない。それよりも、早く出ていってくれないか。…欝陶しいんだよ」

「え…?」


初めてカガリに“欝陶しい”という言葉を使った。俯せになっていた体を起こして、カガリの顔を見ると予想どおりの表情をしていた。
出会ってから今まで、カガリを邪険に扱った事がなかったので、初めて冷たい態度を取る俺に、彼女は傷ついた表情を浮かべていた。

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