【怪文書】
□三獄神ネタの花束。
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「はい、これあげる」
花屋の主人「トメさん」から唐突に何かの包みを手渡され、
花屋でのバイト中も終わって帰ろうとしていた源氏名w「九鬼(くかみ)」こと魔舎裏は、驚いて目をぱちくりさせた。
「??何でしょう?」
「あんたはいつもよく働いてくれるから、そのお礼に、ね」
「ええ?しかし給金をいただくからには働きをもってお返しするのは当然ですし…」
「ままま、そう堅い事言わずに受け取りなさいな。あんたらしいけどね。
あんたのお仲間の分もちゃんと用意してるから、ね」
「は、はあ…」
受け取った包みをよく見ると、箱状のものを綺麗な紙で包装された、おそらくはお菓子のようなものだった。
魔舎裏は礼を言いつつ花屋を後にし、本来の職場・斎大心理学研究室に向かう。
「戴いてしまいました」
学生もその殆どが帰ってしまってがらんとした室内に、魔舎裏の声が響く。
「其れは良かったな」
特に何の感慨も持たずにPCをいじりつつ、彼の主―――耶雲は返答した。
「へえ、九鬼先生あのおばあちゃんからチョコ貰ったんですか?
いいなあ、俺も義理でイイから欲しいな、チョコ」
帰り支度をしていた学生の一人が、ニコニコしながら呼びかけてくる。
「そうなんだ。何だか気の毒と言うか…
?
よく、此れがチョコレートだって分かったね」
「あはは!九鬼先生ボケ上手〜!!バレンタインじゃないですか、今日」
「ああ。そんなイベントも在ったんだった」
実体化には慣れたものの、まだ今ひとつ人間の風習には疎い魔舎裏であった。
その世間ずれしていないというか、大学助手の癖に物知らずで天然ぽい仕草が意外と
生徒の人気を呼び、本人の知らない所でかなりの人気を誇っている。
「コイツのボケは天然だろ。何せ宇宙人だからな」
耶雲が冷淡に突っ込む。
まだまだ人界に対する知識が未熟だ…と窘める語気は、恐らく魔舎裏にしか分からない。
「うわ、鷹水先生ヒドスwww」
「いいんだ、何時もの事だし…(涙)」
ある意味「宇宙人」と言う表現は的を得ている。
「もう、しっかりしてくださいwww
あ、そうそう先生の分も在るんですよ、研究室の女の子全員連名のチョコ。
いいなあ、俺もちゃんと箱に入ってる奴欲しいな。ちっさいのじゃなくて」
学生は羨ましそうに言うと、魔舎裏に大きなチョコレートの包みを差し出した。
どうやらサークルやら本命ゲットやらに忙しい女子生徒達に強迫頼まれたらしい。
「わ、ありがとう」
「や、俺じゃないっすよ?ここの女子ですからね?」
「うん、其れくらい解ってる。堀部君が私にチョコレートくれても気持ち悪いし」
「ウホッwwそうですよね〜」
漸く今日と言う日の定義を思い出しかけているらしい。軽口を叩けるだけの余裕も出てきた。
最近になって、人の名前の学習もかなり進んでいるようでもある。