【怪文書】

□御大と一緒。
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「…なあ、親父」

霊界、審判の門。
魔界はすっかり平穏な世界になり監視の必要もなくなったのだが、
かといって死者の数が其れで減るわけではない。
相変わらず、霊界は慌ただしい空気に包まれていた。

隠居したとは言え、
其処は多忙を極める霊界にあってぶらぶらするわけにもいかず
事務処理を手伝ってくれている閻魔にふと、コエンマは声を掛けた。

「何だ?」

「…冥王との戦いについてなんだが」

「!!」

「そんなに身構えんでも…
(;´д`)」

例の件(【狭間の話】参照)のことも手伝ってか、最近閻魔は
「冥界」「冥王」「耶雲」という言葉に過剰反応する傾向にある。
この大柄で無骨な閻魔をここまで怯えさせる件の冥王について、
コエンマ長年の謎は膨らむ一方であった。

「かつて、霊界と冥界が戦争をした事は
我々霊界人なら誰でも知るところだが、
親父は霊界を束ねるものとして、彼と戦った事は間違いないか?」

「コエンマ…幾らなんでもワシは其処まで捏造せんぞ…」

「いや疑っているわけではなくて、純粋に知りたいだけだ。
その…親父と彼とでは随分体格差があるようなんだが…


一体、どんな風に戦ったんだ?」


「む…それは…」

コエンマの疑問もむべなるかな。
耶雲の身長が如何に2m近いとは言え、
閻魔の身長は優にその10倍はあるのだから。

「まあ…ぼたんに憑依した状態ですら
一撃であれだけ親父を吹っ飛ばせたわけだし、
あのままの状態でも充分といえば充分だろうがのう…」

「…」

「いやほら、よくあるじゃないか。
ああいったラスボス的な存在にはなんというか、こう…
【真の姿】とでも言う奴が。
…マンガの見過ぎかのう?はっはっは」

「…」

「…親父?」


「…ふ」

「いや、息抜きによく読んだりするからの?
サボりじゃないぞ?マンガとか」





「ふ…ふふふふふふははははははは!」




「へ?」

突然笑い出した閻魔に驚くコエンマ。


「あああるともコエンマ、奴の今の姿は仮初めのものだ。
今は星回りがああだからあんな成りをしているがな…
かつて我々と争うた時のあやつは…あの邪神は…


ふ、ふははははははははははははは!
何と悍しき姿か!
闇さえも忌避する、
あの名状しがたく慄然たる混沌の結晶よ!
はははははははははは!
はははははははははははははははは!!



「お、親父―――ッッ!!??
((((;゚Д゚))))」



未だ笑いの収まらぬ閻魔に恐怖したコエンマは医療チームを呼び、
彼を治療室に搬送させた。


(何と言うことだ!
あの親父が正気を無くす程だというのか…!)

冷や汗がコエンマの頬を伝う。



(お、恐ろしい…!でも知りたい…)


ジレンマと恐怖を残したまま、
その場は閻魔の件で慌ただしく時間だけが流れていったのだった。


゚・*:.。. .。.:*・゚゚・*:.。. .。.:*・゚゚・*:.。. .。.:*・゚




3日後、斎場大学研究室。

「耶雲…」

コエンマは今、閻魔を(間接的に)病院送りにした冥王の前に立っていた。

「何だ」





「…いや、何でもない…」


「?」



結局(怖くて)聞けませんでした。

【完】
いきなり間接的な絡みでスイマセン

【後書き】
あの体格差でバトルって無理ですよね、的な発想から。
エンマ大王って、ホントなんで劇場版で出てきてないの?
其処も疑問でしたので、弊社では
「エンマ大王が一方的に耶雲を恐れている」
という設定です。
その理由とは…?
まあ、詳しくは「語ろう冥界。」の邪神に関する
妄想論文をお読みくださいw
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